SV811-3 シングル 12Wモノラルアンプの製作


Rコア入力トランスと出力トランスを用いた製作例としてSV811-3 シングル 12Wモノラルアンプをご紹介いたします。
本アンプは12Wという300Bの5割増しに当たる高い出力を得られる大型アンプでありながら、500V以下の電源電圧と安価な一般市販部品のみで構成される作り易さを特徴とします。

SV811-3 シングル 12Wモノラルアンプ定格
最大出力 12W
周波数特性(1W) 15Hz〜40KHz +0,-3db
ダンピングファクタ 3.8
歪率 (1KHz) 1W : 0.3%、10W : 6.%、12W : 9%
残留雑音 0.9mV(聴感補正無し)

SV811-3

SV811-3はロシアSvetlana社が送信管811Aを原形に開発したオーディオ用の出力管です。トリタンの明るく輝くフィラメントと板プレートがゲッターの無い完全に透明な大型ガラス管に納められた大変美しい真空管です。
トリタンフィラメント、板プレート、低ミューの組み合わせには211や845の旧型原形球等があり、その音質は高い評価を受けています。SV811-3はトリタンフィラメント、板プレート、低ミューの組み合わせによる音質を味わえる数少ない現行球でもあります。
主な定格は下記の通りです。
プレート損失 65W
ミュー 3.5
相互コンダクタンス 1700μS
内部抵抗 2KΩ
最大プレート電圧 800V
最大プレート電流 160mA
フィラメント電圧 6.3V
フィラメント電流 4A

有名な300Bより大型の球ですが、

等、使い難い面もあります、しかし、これらの欠点を克服すれば、美しく光り輝く動作姿と共に300B以上に魅力的な球です。

アンプの設計方針

本アンプは高性能、部品調達が容易、製作し易いを目標としました。

アンプの構成

1.全体構成
6SL7電圧増幅---6L6GC3結ドライバ---入力トランス(1:0.9)---SV811-3固定バイアス---出力トランス5KΩの構成です。

2.出力段

500V以下の電源電圧から効率良く出力を取り出す為にグリッド+領域まで駆動するA2級動作とします。さらに固定バイアス式として電源電圧を有効に利用します。
出力段の動作点は下記の通りです。
プレート電圧 460V
プレート電流 70mA
グリッド電圧 -75V
負荷 5KΩ

約5WまではA1級動作で5W以上はグリッド+領域に振込むA2級動作となります。最大出力時にはグリッドは約+35Vまで振込まれ、この時に要する入力電圧は220Vピークtoピーク、約78Vrmsに達します。グリッド+領域ではグリッド電流が流れますのでグリッド電流に負けず、且つ大きな電圧を供給できる強力なドライバ段が必要です。
出力トランスはRW-20です。3段増幅アンプですので出力トランスは1次:2次逆相接続とします。

3.MOS−FET利用、固定バイアス回路

固定バイアス回路はSV811-3のグリッドに単にバイアス用の負電圧を供給するだけでなく、SV811-3のグリッドに流れるグリッド電流も吸収する必要があります。グリッドが+領域に振られる時は信号がグリッドにより整流されて直流分が発生します、これによりグリッド電圧はより負側に移動し、プレート電流を減少させ、出力の増加を抑えてしまいます。有効に出力を増加させる為に固定バイアス回路はグリッド電流が流れても、一定のバイアス電圧を保たなくてはなりません。本アンプでは、通常の固定バイアス回路の後にMOS-FETによるソースフォロワ回路を増設し、グリッド電流を吸収しています。
一般の安定化電源のソースフォロワとは反対側にNch MOS-FETが配置されているのは、グリッド電流がバイアス電圧を減少させるのではなく、増加させる方向に働く為です。Nch MOS-FETはバイアス電圧を増加させようとするグリッドからの電流を消費して、グリッドの電圧を一定に保ちます。

4.ドライバ段
6L6GCの3結とRC-20大型入力トランスの組み合わせによりグリッド電流に負けない高出力を得ています。RC-20入力トランスは1次直列、2次並列、同相結線です。1:0.9の軽度なステップダウン動作となり高い電流供給が可能です。RC-20の2次側は負荷抵抗なしのオープン(開放)使用とします。オープン使用特有の伸びやかな音質が得られると共に、入力トランスからの全供給電流を無駄無く出力管のグリッドに送り込む事ができます。
6L6GCは実行プレート電圧290V、プレート電流24mAで動作します。回路図では6L6GCの空きピンである1ピンがカソード6ピンに配線されています。これはサプレッサーグリッドが独立して存在するEL34(6CA7)もドライバ管として使える為の工夫です。

5.電圧増幅段(初段)

電圧増幅段は6SL7 1/2です。残り片側のユニットは使用せず、未使用ユニットの各電極はグランドに落します。プレート負荷抵抗を240KΩと高くし高い利得を得るのと同時に、高域時定数を大きく設定する事により、ドライバ段及び出力段の高域時定数との間に適切なスタッガ比を設けています。

6.負帰還
本アンプは入力トランスを含むにも係わらず5dbのメジャー負帰還を掛けています。これはSV811-3の内部抵抗が300B等に比べて高く無帰還状態では約1.7のダンピングファクタしか得られない為です。5dbの負帰還により約3.7と適切なダンピングファクタが得られます。
入力トランスと出力トランスの良好な高域位相特性と初段との適切なスタッガ比設定により、2段のトランスを含むにも係わらず安定な負帰還を掛ける事ができます。帰還に係わる位相補正は必要ありません。安定した容量負荷時方形波応答特性を示します。

7.電源部
電源トランスはノグチの安価な汎用品PCM-170Mです。AC350Vをダイオードによるセンタータップ整流する事により470Vの直流電圧を得ました。チョークもノグチの汎用品PCM-1520です。多用しています400V100μFの電解コンデンサは弊社で配布を行ったユニコン製縦型小型一般品です。
固定バイアス用の負電源はAC290Vをセンタータップ整流して-405Vを得ています。
SV811-3のフィラメント6.3V4Aは交流点火ではハム雑音が多く直流点火とします。電流が多いので効率良く作り出さねばなりません。PCM-170Mの6.3V3A、2回路を直列に用い、中間をセンタータップとして5AのショットキバリアダイオードF5KQ100でセンタータップ整流する事によりダイオードでのロスをブリッジ整流の半分に減らしています。整流後、10000μFと0.1Ω、10000μFX2のπ型フィルタによりリップル分を減少させています。

全回路図

全回路図(SV811SEM.GIF)

アンプシャーシ、外観、内部配線

シャーシは弊社のMS-1 シングル型モノラルアンプ用シャーシです。縦長のシャーシでステレオで2台並べるとフルサイズコンポのアンプと同程度の幅となります。
SV811-3がゲッターの無いガラス部が全透明な球ですので、6L6GCと6SL7も球の頭部分にゲッターが無く透明なガラスである物を選びました。6L6GCはロシア製の無ブランド品、6SL7はNEC製の通信用です。
右端に出力管の電流を示す電流計があります。電流計の真下にあるツマミがバイアス調整用ボリュームです。バイアス調整用ボリュームの左側、出力管との間にあるのがハムバランサ用ボリュームです。

上部から見た外観
前面、後面、側面

内部の配線状況

製作上の注意

感想と音質

なんと言っても光り輝いて動作する大型ST管は見ごたえがあります。SV811の美しい動作姿には300Bも形無しです。
試聴してまず感じたのが音楽の強奏部での音質の良さです。大きな音が崩れる事なく出るのと、大きな音の影で鳴る小さな音が掻き消されずに聞き取れます。結果的に演奏の強弱が大きくなって聞こえます。
音のバランスは中低域寄りです。明瞭な中域としっかりした低域の上に、控えめな高域が載った感じです。中域の明瞭度が高いのでボーカルが実に生々しく聞こえます。
モノラルアンプ2台にした利点でしょうか、音も定位も良好でスピーカ間の奥に向かって音像が並びます。

測定結果

1.入出力特性

12Wまでは出力が直線的に上昇します。12Wを越えても波形が急激に崩れる事はなく、徐々に15W程度まで増加します。


1KHz : 1W

1KHz : 6W

1KHz : 12W

2.周波数特性

無帰還時でも25Hz〜20KHz(+0,-3db)とほぼ可聴周波数範囲を満足します。トランス2段、入力トランスの2次開放使用にも係わらず、低域・高域端とも全く暴れのない理想的な減衰特性を持ちます。10W時の低域減衰は出力トランスの飽和の影響です。

5dbの負帰還を掛けると15Hz〜40KHz(+0,-3db)の広帯域となります。帰還後も暴れのない綺麗な特性が保たれています。

3.方形波応答

6Ω負荷

100Hz

1KHz

10KHz
6Ω+ 容量負荷(10KHz)

6Ωのみ

6Ω+0.047μF

6Ω+0.1μF

6Ω+0.47μF

6Ω+1μF
容量負荷のみ(10KHz)

無負荷

0.047μFのみ

0.1μFのみ

0.47μFのみ

1μFのみ

いずれも良好な波形を示します。容量負荷に対しては極めて安定です。

4.歪率特性
無帰還時

SV811-3は良好な直線性を持ち、300Bと同等の低歪み管である事がわかります。100Hzと1KHzでは歪み打ち消しが有効に働き広い範囲で低歪みとなっています。5W位を境にA1級からグリッド電流の流れるA2級に移行するのですが、歪み特性は滑らかに連続しています。この事はドライバ段が強力さと、グリッド電流を吸収するバイアス回路の良好な動作を示しています。

5db負帰還時

1KHz・1W 0.22%、4Wまで1%以下、10W 6%、12W 9%となりました。

FFTによる歪成分分析


100Hz 1W

100Hz 6W

1KHz 1W

1KHz 6W

100Hz、1KHz共1Wでは4次程度までの低次の高調波しか含まず、かつ次数が高いほど小さくなる良好な歪み成分をしています。出力6Wでは高次までの高調波を広く含み、偶数次より奇数次調波が強くなっています。グリッド電流等の影響で波形が潰れ気味になっている事を示しています。

5.残留雑音
0.9mVとフィラメント6.3Vの出力管としては低く抑えられました。残留雑音の内容はフィラメントからの物が半分、初段6SL7での誘導ハムが半分と思われます。初段6SL7によってかなり影響されますので、低雑音の物を選択する必要があります。

6.ダンピングファクタ

無帰還時は1.7と低い値となります。このままではスピーカによっては低域の制動不足が心配されます。5dbの負帰還によりダンピングファクタは3.8に上昇し、多くのスピーカに適応します。

使用部品

1.真空管
SV811-3 はロシアSvetlana製です。 ラジオデパート3Fのサンエイ電機(TEL 03-3251-0232)にて1本3,500円の大特価で入手可能です。この球が3,500円は絶対のお買い得です。
6L6GCはロシア製のノーブランド品を用いました。軽い動作ですので、どこの製品でも大丈夫と思います。但し、電源投入時真空管が暖まりプレート電流が流れ出すまでは400V近い電圧が6L6GCに掛かりますので、6L6、6L6G、6L6GA、6L6GB等は耐圧不足で使えません。必ず6L6GCを用いて下さい。
6SL7は手持ちのNEC製を用いました。誘導ハムの少ない品種を選らぶ必要があるので、数種を購入して残留雑音の低い球を選び出して下さい。

2.抵抗
殆どの抵抗(2W、5W)は不燃性(酸化金属皮膜)抵抗です。性能、安定度の点で高圧が掛かる真空管アンプには適した抵抗と思います。10Wはセメント抵抗です。

3.コンデンサ
電解コンデンサは普及型の85度小型品種でかまいません。製造から年月を経た旧型の大型品種よりは近年に(2〜3年以内に)製造された品種の方が良いと思います。オーディオ用等特殊な物よりの売れ筋で品物の回転が早い一般品種の方が良い結果となる事も多々あります。

4.トランス
入力トランスは弊社RC-20、出力トランスはRW-20です。入力トランスはタンゴ社NC-20Fに出力トランスはXE-20S又はFW-20Sに置き換え可能とも思われますが、負帰還の安定度は確認する必要があります。
電源トランスはノグチPCM-170M、チョークはPCM-1520です。どちらも安価で良質な製品です。

5.シャーシ
弊社穴あけ塗装済みMS-1型を用いました。

6.配線材
UL1015規格線(AC600V耐圧、105度)がお勧めです。太さは小電流部がAWG22、大電流部がAWG20で十分と思います。
あまり太い線は配線しづらいと思います。

7.使用部品一覧
モノアンプ1台分です。
主要部品のみです。ネジ類、配線材、小物パーツ等は別途必要です。
メーカー、販売店、価格には不明・不正確な箇所があります。
部品番号 仕様/型番 品種 メーカー 販売店 価格
C01 100P ディップマイカコン シーアール 90
C02 1000μF16V 小型縦型電解 ニッケミ
C03 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C04 47μF250V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 100
C05 10μF250V 小型縦型電解 ニッケミ
C06 47μF250V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン
C07 22μF450V 小型縦型電解 ニッケミ
C08 10μF250V 小型縦型電解 ニッケミ
C09 47μF250V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 100
C10 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C11 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C12 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C13 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C14 100μF400V 小型縦型電解 ユニコン ソフトン 180
C15 10000μF16V 小型縦型電解 東信工業 千石 150
C16 10000μF16V 小型縦型電解 東信工業 千石 150
C17 10000μF16V 小型縦型電解 東信工業 千石 150
D01 3TH62 1500V3Aダイオード 東芝 若松 250
D02 3TH62 1500V3Aダイオード 東芝 若松 250
D03 1N4007 1000V1Aダイオード GI 千石 20
D04 1N4007 1000V1Aダイオード GI 千石 20
D05 F5KQ100 100V5Aショットキバリアダイオード 若松 125
D06 F5KQ100 100V5Aショットキバリアダイオード 若松 125
Q01 2SK1758 500V Nch MOS-FET
R01 100K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R02 10K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R03 2.7K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R04 10/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R05 240K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗
R06 1K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R07 3.9K/5W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗
R08 100/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R09 欠番
R10 330/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R11 51K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R12 5.1K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R13 51K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R14 100K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R15 68K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R16 20K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R17 20K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R18 51K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R19 3K/10W セメント抵抗
R20 510K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R21 510K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R22 510K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R23 510K/2W 不燃性(酸化金属皮膜)抵抗 タクマン 千石 20
R24 0.1/10W セメント抵抗 タクマン 千石 150
T01 RC-20 入力トランス ソフトン ソフトン 9800
T02 RW-20 シングル型出力トランス5KΩ20W ソフトン ソフトン 9800
T03 PMC1520H チョーク ノグチ ノグチ 4500
T04 PCM170M 電源トランス ノグチ ノグチ 7900
V01 6SL7 NEC
V02 6L6GC ロシア
V03 SV811-3 Svetlana サンエイ無線 3500
VR01 100KA RV24YN 単連ボリューム コスモス 350
VR02 50B/2W RV30YN 単連ボリューム コスモス 500
VR03 50KB RV24YN 単連ボリューム コスモス 350
USソケット 2個 QQQ 200
UXソケット 1個 400
4L1Pラグ板 6個
2L1Pラグ板 2個
小型放熱器 2個 F5KQ100に装着用
2A ヒューズ 1個
MS1 シャーシ 塗装穴あけ済、外装パーツ・電流計付属 ソフトン ソフトン 11800


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