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Re: RX-80-5の適用 投稿者:寂夜 投稿日:2023/01/19(Thu) 16:35 No.63521

初めまして、アンプの設計・制作をしている寂夜と申します。(元、某社の設計者)

現在QuadUオリジナル回路を参考に、EF94/6AU6x2本によるQuad型位相反転初段→12BH7Aによる出力管直結カソードフォロア→807ビーム管接続PPの構成によるA2級〜AB2級のアンプを設計しています。

Spiceシュミレータでは出力トランスにSpiceデータの有るTAMURA社F-783(5.5kΩPP・50W/30Hz・250mA/20mA)を適用し、送信管807のG1電力駆動により、450V電源電圧・807プレート損失73%にて40Wの最大出力が得られ、各部に十分な設計余裕を持つ回路と定数が出来ております。古い807を無理なく長く使う為のアンプです。

しかしながら裸特性の向上とKNFの安定な実施を考え、F-783に代えて御社のRX-80-5かSANSUI社のSW-50-5への変更を検討しています(現時点の相場的にはOTP2台で4万円程度と同等です)。

つきましては下記についてご回答頂ければ幸いです。
1. RX-50-5のSpiceデータはありますか?
2. Rコアの特性上、不平衡電流には弱いと思われますが、F-783及びSW-50-5に比べて、不平衡電流に対する特性劣化度は如何でしょうか?
3. 設計では最大出力時にPP間で1.350Vもの信号ピーク電圧が印加されます(DC印加電圧は450Vです)。数十年に渡る十二分な長期運用を考慮した場合RX-80-5の絶縁耐力(特に巻線上近いと思わるPP間対KNF間)は問題ありませんか?

尚、オーディオアナライザ・広帯域レベル計・ストレージオシロ・DMM等の計測器は在りますので、位相補償や増幅度定数等の調整は可能です。

(余談)
それにしてもQuadUのNFB・PFBを組合せつつ、シンプルな回路に仕立て上げた技術者は立派ですね。OPTも相当に検討を重ねた代物なんでしょうね。EF86→EF94/6AU6へのパワーアップ(330Vppの低インピーダンス出力)も一筋縄では行きませんでした(笑;


Re: RX-80-5の適用 投稿者:ソフトン善本 投稿日:2023/01/19(Thu) 17:20 No.63523

寂夜 様、今日は。ソフトン善本です。
お問い合わせありがとうございます。

>つきましては下記についてご回答頂ければ幸いです。
>1. RX-50-5のSpiceデータはありますか?

Spiceデータはご提供いたしておりません。
出力トランスのSpice結果は現実との乖離が大きいと感じております。
高域に関しては、大型OPTは100kHz以上では個体差が大きくSpice結果と一致いたしません。
Spiceで10kHz方形波を綺麗に整える位相補正定数を厳選いたしても現実には同形状にならない場合がございます。
低域に関しては信号レベルと不平衡電流量により一次インダクタンスが大きく変動いたすので、Spice結果とは一致いたしません。

>2. Rコアの特性上、不平衡電流には弱いと思われますが、F-783及びSW-50-5に比べて、不平衡電流に対する特性劣化度は如何でしょうか?

PP用OPTの場合、コアが高性能なほど不平衡電流による1次インダクタンス変動が大きくなります。
RX-80-5は高性能コアの為、完全に平衡ならば1次インダクタンスは1000H近くに達します。
不平衡電流の増加と共に1次インダクタンスは減少いたしますが、
4mAまでなら100Hは得られます。私見ですが不平衡電流4mA以内のご使用をお勧めいたします。
不平衡電流量と1次インダクタンスの特性図はRX-80-5ホームページの3.1次インダクタンス特性をご参照下さい。
http://softone.a.la9.jp/RX80-5/RX80-5.htm

>3. 設計では最大出力時にPP間で1.350Vもの信号ピーク電圧が印加されます(DC印加電圧は450Vです)。数十年に渡る十二分な長期運用を考慮した場合RX-80-5の絶縁耐力(特に巻線上近いと思わるPP間対KNF間)は問題ありませんか?

1次:2次、3次間耐圧は2KVAC、1次PP間最大電圧は1KVACです。
最大出力時にPP間で1.350Vピークであれば短時間耐圧は大丈夫です。
しかしながら、数十年に渡る耐圧維持は検証いたしておりません。

>尚、オーディオアナライザ・広帯域レベル計・ストレージオシロ・DMM等の計測器は在りますので、位相補償や増幅度定数等の調整は可能です。

周波数特性と位相保障、負帰還余裕の検証にはネットワークアナライザ(FRA)が最も有効だと感じております。

宜しくお願い申し上げます。
ありがとうございます。


Re: RX-80-5の適用 投稿者:寂夜 投稿日:2023/01/19(Thu) 17:25 No.63524

すいません、誤記訂正です。
(誤)1. RX-50-5のSpiceデータはありますか?
(正)1. RX-80-5のSpiceデータはありますか?


Re: RX-80-5の適用 投稿者:寂夜 投稿日:2023/01/19(Thu) 18:21 No.63526

ソフトン 善本様

早速のご回答有難うございます。

Spiceデータと実機データの乖離、承知致しました。
高域に関しては仰る通りで、送信管807の場合も局部発振などSpiceでは見付かりませんね。低域の不平衡電流:インダクタンスの件は仰る通りですね。信号レベルでの特性変化はコアのヒステリシス特性の影響でしょうか?(透磁率と最大磁束密度とヒステリシスの関係でコア材質は難しそうです)

> PP用OPTの場合、コアが高性能なほど不平衡電流による1次インダクタンス変動が大きくなります。RX-80-5は高性能コアの為、完全に平衡ならば1次インダクタンスは1000H近くに達します。

この特性は承知しております。敢えてインダクタンスの絶対値を抑えて不平衡電流耐性を上げたOPTもございますね。それにしても1000Hとは・・・異様に大きい。

> 不平衡電流の増加と共に1次インダクタンスは減少いたしますが、4mAまでなら100Hは得られます。私見ですが不平衡電流4mA以内のご使用をお勧めいたします。

設計上は兎も角、実運用上はDCバランスを完全に取って「無信号時の不平衡電流0mA」にしたとしても、音楽再生時にはPPの素子の個体差で「確実に不平衡電流は流れる」訳です。ペアチューブとて全特性範囲で全く同じEp-Ip-Eg1特性では無い訳ですから・・・。現実的に無信号時不平衡電流0mAに調整したとしても、全出力範囲で不平衡電流4mA以内と言うのはかなり厳しいように思います(今回はIpo=43mA、Ip-min=0mA, Ip-Max=265mAの設計です)。

> 1次:2次、3次間耐圧は2KVAC、1次PP間最大電圧は1KVACです。最大出力時にPP間で1.350Vピークであれば短時間耐圧は大丈夫です。しかしながら、数十年に渡る耐圧維持は検証いたしておりません。

1次PP間耐圧が問題ですね。OPTの定格容量が80WとしてPP間5kΩなら、80W入力時のPP間電圧はE=√(PxZ)=√(80x5,000)=632.5Vrms=895Vop=1,789Vppかと思います、1次PP巻線の開始点〜終了点間の耐圧は半サイクルで考えれば良いので(1サイクル内のプラスピーク点とマイナスピーク点は時間的に重ならない)、この耐圧が1kVACなら仕様内運用になるのではありませんか?。数十年の耐圧維持は絶縁材の特性と耐環境劣化性によりますから、線材絶縁被覆とレジン等の絶縁物次第ですね。電力用トランスの高圧絶縁冷却油に浸した構造はこの点では大変有利ですがOPTでは大袈裟に過ぎますから。

> 周波数特性と位相保障、負帰還余裕の検証にはネットワークアナライザ(FRA)が最も有効だと感じております。

はい、所有のオーディオアナライザは、ゲイン・位相差・歪率が同時に計れます。でもアンプの局部発振や超高域発振等は結局は400MHz帯域オシロスコープや広帯域レベル計でないと見付けれない事が有りますね。OPT単体ならFRAだけで十分だと思いますが。

実際に6L6GC-PP/KNFで定格出力45Wの自社製アンプに搭載されて1965年から多数販売され、未だにLUXのOYシリーズOPT(特性重視)の様な断線や巻線短絡の故障を聞かないSANSUIのSW-50-5(信頼性重視、永久保証をうたっていました)の方が、この種のアンプには好適なのかも知れませんね・・・・

有難うございました。


Re: RX-80-5の適用 投稿者:ソフトン善本 投稿日:2023/01/20(Fri) 09:15 No.63541

寂夜 様、今日は。ソフトン善本です。

不平衡電流量への耐性を重視なされる場合は弊社40W型シングルOPT RW-40-5のプシュプル回路使用をお勧めいたします。
コアにギャップを設けておりますので不平衡電流量を全く考慮しなくて良い利点があります。

弊社RW-40-5ホームページの
 ●RW-40-5のプッシュプル出力トランスとしての使用
をご参照頂ければ幸いです。
http://softone.a.la9.jp/RW40-5/RW40-5.htm

宜しくお願い申し上げます。
ありがとうございます。


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