写真右は裸の状態のRコア出力トランスです、製品は左の角型化粧ケース入りです。
形式 | プッシュプル型 |
出力容量 | 80W/35Hz |
1次巻線 | 5KΩ、UL端子(50%)有り |
2次巻線 | 4Ω、8Ω |
3次カソード帰還巻線 | 16Ω 2組 |
周波数帯域 | 2.7Hz〜50KHz -1db、入力4V、2Rp=Zp=5KΩ |
1次インダクタンス(H) | 最小120H、最大860H |
最大1次許容DC電流 | 280mA(2本分) |
1次許容不平衡DC電流 | 6mA(4mA以内を推奨) |
電力損失 (8Ω負荷) | 0.23db |
直流抵抗値 | 1次P-P間: 168Ω 2次0-8Ω間: 0.17Ω 3次0-16Ω間: 4.18Ω |
1次:2次、3次間耐圧 | 2KVAC |
1次PP間最大電圧 | 1KVAC |
使用Rコア | R160 160W型コア |
形状 | 角型ケース入り、タンゴXE60、FC-30シリーズと同底面寸法、 タンゴXシリーズ、タムラF-200Xシリーズと同取り付け穴寸法。 注意) タムラと同寸の取り付けネジ穴は持っておりますが、 タムラF-200Xの底面寸法は100mmX90mmとRX-80-5より 小さいのでシャーシ上面にタムラ用の最小スペースしか確保して いないシャーシにはRX-80-5を取り付けられません。 必ずタRX-80-5を取り付けられる110mmX100mm以上の空きが あるかご確認下さい。 |
引き出し形式 | リード線 |
外形寸法、重量 | W:110mm, D:100mm, H:150mm, 2.8Kg |
価格 | 20,400円 (税込22,440円) |
カソード帰還巻線を使用しない場合
カソード帰還巻線を使用しない場合は回路的に何処にも繋がず、無接続とします。RX-80-5はカソード巻線を放置しても良好な特性となる様に設計されています。カソード巻線リードは他と繋がずアンプ内の空き端子に固定するか、付属の絶縁スレーブで先端を絶縁処理した後、巻き取ってRX-80-5ケース内に格納します(取扱い説明書参照)。
カソード帰還巻線の使用方法
カソード帰還を用いる場合、1次巻線とカソード帰還巻線の接続は下図の通りです。
必ずP1(橙)を用いる出力管にはK1巻線を用いて、P2(黄色)を用いる出力管にはK2巻線を用いてカソード帰還をかけて下さい。
自己バイアス形式の場合はK1-茶とグランドの間、及びK2+白とグランドの間に自己バイアス抵抗とバイパスコンデンサを設けます。
カソード帰還量の求め方
出力段の1次巻線側利得は信号の半波を上下の出力管が別々に増幅するB級PPで考えると簡単に求まります。(A級、AB級も同じ結果となります。)
まず、カソード帰還接続では出力管に対して1次巻線とカソード帰還巻線の両方が負荷となるため、負荷抵抗が1.25K(5KΩの1/4)ではなく
Rl = ( SQRT(1250) + SQRT(16) ) **2 = 1548
SQRTはスクエアルート演算
**2は二乗演算
となります。
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 1548 // Rp )
gmは出力管の相互コンダクタンス
Rpは出力管の内部抵抗
//は並列値演算
で求まります。
カソード帰還後の利得は
帰還率βが負荷Rlとカソード巻線の電圧比(巻線比)となりますので
β = SQRT( 16 / 1548 ) = 0.102
帰還後利得は帰還回路の公式より
Af = A / ( 1 + Aβ)
となります。
帰還率は A / Af
良く使われるdB表現では 帰還率 = 20 * log( A / Af ) dB
となります。
カソード帰還量計算例
よく用いられるEL34(6CA7)を例にカソード帰還量を求めてみます。
EL34のgmは11000μS、Rpは15000Ωですので
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 1548 // Rp )
= 11000 * 10**-6 ( 1548 // 15000 )
= 11000 * 10**-6 * 1403
= 11 * 1.403 = 15.43 倍
帰還後利得は
Af = A / ( 1 + Aβ)
= 15.43 / ( 1 + 15.43 * 0.102 )
= 15.43 / ( 2.57 ) = 6.07 倍
帰還率は 2.57 又は 20 * log( 2.57) = 8.2dB
となります。
注意) タムラと同寸の取り付けネジ穴は持っておりますが、タムラF-200Xの底面寸法は100mmX90mmとRX-80-5より小さいのでシャーシ上面にタムラ用の最小スペースしか確保していないシャーシにはRX-80-5を取り付けられません。 必ずRX-80-5を取り付けられる110mmX100mm以上の空きがあるかご確認下さい。
周波数特性
2.7Hz〜50KHz -1dbの広帯域と暴れのない素直な減衰特性が特徴です。低域再生限界は2.7Hzと大変優秀です。高域は130KHzと350KHz付近に軽微な乱れが見られますが、低域、高域ともほぼ理想的な特性をしています。
信号源インピーダンス別周波数特性
出力トランスの周波数特性は入力信号源のインピーダンスにより変化します。一般に信号源インピーダンスが低いほど帯域は広く、信号源インピーダンスが高いほど帯域は狭くなります。下図は3極管に相当する1.2KΩの低い信号源インピーダンスで駆動した場合とビーム管や5極管に相当する20KΩの高い信号源インピーダンスで駆動した場合の周波数特性です。
.信号源インピーダンスにより帯域は下表のように変わります。
信号源インピーダンス | 帯域 |
5KΩ(2rp=zp) 標準 | 2.7Hz〜50KHz -1db |
1.2KΩ 3極管相当 | 0.7Hz〜70KHz -1db |
20KΩ ビーム管、5極管相当 | 3.8Hz〜35KHz -1db |
信号源インピーダンス1.2KΩでは大変広帯域となりますが、100KHz〜150KHzにかけて特性に段差が現れます。信号源インピーダンス20KΩでは若干狭帯域となりますが、暴れのない素直な減衰特性です。
位相特性
位相の回転も大変穏やかで安定した負帰還をかける事ができます。低域では1Hzにおいても進みは20度以下です。高域においても140度以上遅れ事はありません。
インピーダンス特性
暴れのない特性をしています。実測値ではやや高い5.2KΩ程度のインピーダンスとなっています。
カソード帰還巻線の特性は実際の動作状態に近い下記条件にて測定します。
周波数特性
2.2Hz〜50KHz −1dbと広帯域、かつ2次スピーカ巻線と類似性の高い特性をしています。 スピーカ出力の特性を改善する為の負帰還ですので、2次スピーカ巻線との類似性の高さは重要です。 70KHz以上の暴れはカソード帰還巻線を無負荷で測定している為です。 若干の負荷をかけるとスピーカ巻線同様と暴れのない素直な高域減衰特性となります。 70KHz以上の高域に関して、下図位相特性を見ると位相の回転が進行するのではなく、回転の進みが遅れる方向に推移していますので、周波数特性上に暴れがあっても安定したカソード負帰還がかかります。
位相特性
位相の回転が少なく、負帰還に適した特性をしています。70KHz以上の高域で位相の回転推移に暴れがあるのはカソード帰還巻線を無負荷で測定している為です。しかし、位相の回転の進みは少なく、1MHzに達しても100度以下ですので安定したカソード負帰還がかかります。
PP型出力トランスの1次インダクタンスは低域周波数特性に大きく影響します。1次インダクタンスは入力信号の大きさと不平衡直流電流値により変化します。1次インダクタンス値が大きく、変化が少ないほど重厚で安定感のある音質が得られます。
RX-80-5の1次インダクタンスは最小120H、最大860Hと大変高く良好な特性です。広範囲で100H以上の高い値を維持しますので、良好な低域特性が得られます。
しかし、不平衡直流電流(DC重畳)に対しては大きく値が落ち込みます。実用的な最大許容値は6mAですが、Rコアの良さを引き出す為には4mA以下でのご使用を推奨いたします。