写真右は裸の状態のRコア出力トランスです、製品は左の角型化粧ケース入りです。
形式 | シングル型 |
出力容量 | 40W/35Hz |
1次巻線 | 5KΩ、9.5KΩ、UL端子有り |
2次巻線 | 4Ω、8Ω |
3次カソード帰還巻線 | 16Ω2組 |
周波数帯域 | 5KΩ 25Hz〜35KHz -2db、入力4V、Rp=Zp 9.5KΩ 25Hz〜35KHz -2db、入力4V、Rp=Zp |
1次インダクタンス(H) | 最小38H、最大42H (9.5KΩ DC重畳60mA) 最小17H、最大23H (5KΩ DC重畳80mA) |
最大1次許容DC電流 | 90mA(9.5KΩ)、110mA(5KΩ) |
推奨1次DC電流 | 80mA以下(9.5KΩ)、90mA以下(5KΩ) |
電力損失 (8Ω負荷) | 0.21db |
直流抵抗値 | 1次B-P間: 226Ω 2次0-8Ω間: 0.18Ω 3次0-16Ω間: 4.2Ω |
1次:2次、3次間耐圧 | 2KVAC |
1次PP間最大電圧 | 2KVAC |
使用Rコア | R160 160W型コア |
形状 | 角型ケース入り、タンゴXE60、FC-30シリーズと同底面寸法、 タンゴXシリーズ、タムラF-200Xシリーズと同取り付け穴寸法。 注意) タムラと同寸の取り付けネジ穴は持っておりますが、 タムラF-200Xの底面寸法は100mmX90mmとRW-40-9.5より 小さいのでシャーシ上面にタムラ用の最小スペースしか確保して いないシャーシにはRW-40-9.5を取り付けられません。 必ずタRW-40-9.5を取り付けられる110mmX100mm以上の空きが あるかご確認下さい。 |
引き出し形式 | リード線 |
外形寸法、重量 | W:110mm, D:100mm, H:150mm, 3Kg |
価格 | 20,400円 (税込22,440円) |
1次巻線信号と2次、3次巻線の信号を同相としたい場合は正相接続とします。1次巻線信号と2次、3次巻線信号を逆相としたい場合は逆相接続とします。出力管への負荷インピーダンス選択と、1次対2次、3次の位相関係は下表の通りです。
増幅段が2段の場合は1次と2次、3次が正相の接続を、増幅段が3段の場合は1次と2次、3次が逆相の接続を選べます。
負荷9.5KΩの場合は帰還率50%と25%の2種のUL端子を選べます。帰還率が高いほど内部抵抗が低く、低歪み率になりますが、感度と出力は低下します。
接続先 | 正相 9.5KΩ | 正相5KΩ | 逆相9.5KΩ | 逆相5KΩ |
プレート | 黄 | 青 | 橙 | 緑 |
スクリーングリッド(UL端子) | 赤(50%) 緑(25%) |
緑(33%) | 赤(50%) 青(25%) |
青(33%) |
電源 | 橙 | 橙 | 黄 | 黄 |
カソード帰還巻線を使用しない場合
カソード帰還巻線を使用しない場合は回路的に何処にも繋がず、無接続とします。RW-40-9.5はカソード巻線を放置しても良好な特性となる様に設計されています。カソード巻線リードは他と繋がずアンプ内の空き端子に固定するか、付属の絶縁スレーブで先端を絶縁処理した後、巻き取ってRW-40-9.5ケース内に格納します(取扱い説明書参照)。
カソード帰還巻線の使用方法
RW-40-9.5には2組のカソード帰還巻線があるので、2組を並列に用いるか直列に用いるかでカソード帰還量を選択できます。並列に用いればカソード帰還量は少なく、直列に用いればカソード帰還量は多くなります。
さらに、RW-40-9.5を正相接続で用いるか、逆相接続で用いるかにもより使用方法が異なります。下表に各場合の接続を示します。
正相接続 | 逆相接続 | |
カソード帰還巻線並列 帰還量 少 |
||
カソード帰還巻線直列 帰還量 多 |
負荷5KΩで用いる時は正相接続では9.5K黄線に代えて5K青線を、逆相接続では9.5K橙線に代えて5K緑線を用います。
カソード帰還量の求め方
負荷9.5K、カソード帰還巻線並列として解説します。負荷5Kやカソード帰還巻線直列の場合の帰還量は最後の表に纏めて掲載します。
並列に結線されたカソード帰還巻線のインピーダンスは16Ωです。又、カソード帰還接続では出力管に対して1次巻線とカソード帰還巻線の両方が負荷となるため、負荷抵抗が9500Ωではなく
Rl = ( SQRT(9500) + SQRT(16) ) **2 = 10296Ω
SQRTはスクエアルート演算
**2は二乗演算
となります。
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 10296 // Rp )
gmは出力管の相互コンダクタンス
Rpは出力管の内部抵抗
//は並列値演算
で求まります。
カソード帰還後の利得は
帰還率βが負荷Rlとカソード巻線の電圧比(巻線比)となりますので
β = SQRT( 16 / 10296 ) = 0.039
帰還後利得は帰還回路の公式より
Af = A / ( 1 + Aβ)
となります。
帰還量は A / Af
良く使われるdB表現では 帰還量 = 20 * log( A / Af ) dB
となります。
カソード帰還量計算例
大型3極管 211 を例にカソード帰還量を求めてみます。
211のgmは3150μS、Rpは3810Ωですので
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 10296 // Rp )
= 3150 * 10**-6 ( 10296 // 3810 )
= 3150 * 10**-6 * 2781
= 3.15 * 2.781 = 8.76 倍
帰還後利得は
Af = A / ( 1 + Aβ)
= 8.76 / ( 1 + 8.76 * 0.039 )
= 8.76 / ( 1.34 ) = 6.54 倍
帰還量は 1.34 又は 20 * log( 1.34 ) = 2.54dB
となります。
負荷9.5KΩ カソード巻線並列 |
負荷9.5KΩ カソード巻線直列 |
負荷5KΩ カソード巻線並列 |
負荷5KΩ カソード巻線直列 |
|
カソード巻線 インピーダンス |
16 | 64 | 16 | 64 |
負荷抵抗 Rl | 10296 | 11123 | 5581 | 6195 |
帰還率 β | 0.039 | 0.076 | 0.054 | 0.102 |
211使用時 帰還前利得 A |
8.76 | 8.94 | 7.12 | 7.43 |
211使用時 帰還後利得 Af |
6.54 | 5.32 | 5.16 | 4.22 |
211使用時 帰還量 |
1.34 2.54db |
1.68 4.5db |
1.38 2.8db |
1.76 4.91db |
注意) タムラと同寸の取り付けネジ穴は持っておりますが、タムラF-200Xの底面寸法は100mmX90mmとRW-40-9.5より小さいのでシャーシ上面にタムラ用の最小スペースしか確保していないシャーシにはRW-40-9.5を取り付けられません。
必ずタRW-40-9.5を取り付けられる110mmX100mm以上の空きがあるかご確認下さい。
周波数特性
25Hz〜35KHz −2dbと広帯域です。9.5KΩでは100KHz付近に+-0.5db程度の微小な乱れが見られますが、これ以外は低域、高域とも素直な減衰特性をしています。 5KΩでは未使用となる巻線の影響が出て100KHz付近の乱れが+-1.0dbと大きくなり、700KHzに共振によるディップが生じます。5KΩでは高域の乱れが若干目立ちますが、低域は9.5KΩ同様素直な減衰をしています。5KΩの特性を重視する場合はRW-40-5をご使用下さい。
信号源インピーダンス別周波数特性
出力トランスの周波数特性は入力信号源のインピーダンスにより変化します。一般に信号源インピーダンスが低いほど帯域は広く、信号源インピーダンスが高いほど帯域は狭くなります。下図は3極管に相当する2.5KΩの低い信号源インピーダンスで駆動した場合とビーム管や5極管に相当する20KΩの高い信号源インピーダンスで駆動した場合の周波数特性です。
.信号源インピーダンスにより帯域は下表のように変化します。
信号源インピーダンス | 帯域 |
9.5KΩ(rp=zp) 標準 | 25Hz〜35KHz -2db |
2.5KΩ 3極管相当 | 12Hz〜55KHz -2db |
20KΩ ビーム管、5極管相当 | 35Hz〜27KHz -2db |
信号源インピーダンス2.5KΩでは広帯域となりますが、100KHz前後の山谷も多少大きくなります。信号源インピーダンス20KΩでは狭帯域となりますが、高域減衰特性の乱れが増える事はありません。
位相特性
低域から70KHzまでの位相の回転は大変穏やかです。 周波数特性同様100KHzに軽微な乱れがあります。インピーダンスの高いトランスですので、1次:2次間容量の影響が強く出て700KHz以上の高域において位相が戻る傾向があります。 いずれにせよ、位相の回転が強く進むことはありませんので安定した負帰還をかける事ができます。
インピーダンス特性
5KΩ、9.5KΩ共に暴れのない特性をしています。 実測では、5KΩ端子はやや高い5.3KΩ程度のインピーダンスに9.5K端子はやや低い9.4KΩ程度のインピーダンスとなっています。
カソード帰還巻線の特性は実際の動作状態に近い下記条件にて測定します。
周波数特性
直列接続、並列接続とも25Hz〜30KHz −2dbと広帯域で2次スピーカ巻線と類似性の高い特性をしています。 スピーカ出力の特性を改善する為の負帰還ですので、2次スピーカ巻線との類似性の高さは重要です。 100KHz以上の乱れはカソード帰還巻線を無負荷で測定している為です。 若干の負荷をかけるとスピーカ巻線同様な素直な高域減衰特性となります。 カソード帰還巻線を並列に接続すると1次:3次カソード巻線間容量が増加する為、700KHzに共振による谷が現れます。100KHz以上の高域に関して、下図位相特性を見ると位相の回転が進行するのではなく、戻る方向に推移していますので、周波数特性上に若干の暴れがあっても安定したカソード負帰還がかかります。
位相特性
位相の回転が少なく、負帰還に適した特性をしています。100KHz以上の高域で位相の回転推移に暴れがあるのはカソード帰還巻線を無負荷で測定している為です。しかし、位相の回転が進むのではなく、戻る方向の暴れですので安定な負帰還がかかります。
シングル型出力トランスの1次インダクタンスは定インダクタンス性を持っています。定インダクタンス性により直流重畳電流や交流入力信号の大小に影響される事なく、安定にスピーカを駆動できます。各条件でのインダクタンスの変化が少ないほど重厚で安定感のある音質が得られます。
RW-40-9.5の1次インダクタンスは
です。
最大直流重畳電流は90mA(9.5KΩ)、110mA(5KΩ)ですが、良好な定インダクタンスを考慮すると80mA以下(9.5KΩ)、90mA以下(5KΩ)での使用が推奨されます。
RX-40-9.5は1次巻線の巻数が多い為、最大直流重畳電流以上では極端に性能が低下します。必ず最大直流重畳電流を守って下さい。
RW-40-9.5の1次巻線は赤色引き出し線を中心に完全対象構造ですので定インダクタンス型PP出力トランスとしても使用できます。直流不平衡に強い、メンテナンス不要型プッシュプルアンプの製作に適します。定インダクタンス型PP出力トランスとしての結線と仕様は下図の通りです。
形式 | 定インダクタンス・プシュプル型 |
出力容量 | 80W/45Hz |
1次巻線 | 9.5KΩ、UL端子(50%)有り |
2次巻線 | 4Ω、8Ω |
3次カソード帰還巻線 | 16Ω2組 |
周波数帯域 | 40Hz〜25KHz -1db |
1次インダクタンス(H) | 最小38H、最大42H |
1次許容DC電流 | 220mA(2本分) |
1次許容不平衡DC電流 | 90mA(80mA以内を推奨) |
電力損失 (6Ω負荷) | 0.21db |
1次:2次、3次間耐圧 | 2KVAC |
1次PP間最大電圧 | 2KVAC |
使用Rコア | R160 160W型コア |
形状 | 角型ケース入り、タンゴXE60、FC-30シリーズと同底面寸法、 タンゴXシリーズ、タムラF-200Xシリーズと同取り付け穴寸法。 |
引き出し形式 | リード線 |
カソード帰還巻線を使用しない場合
カソード帰還巻線を使用しない場合は回路的に何処にも繋がず、無接続とします。RW-40-9.5はカソード帰還巻線を放置しても良好な特性となる様に設計されています。カソード帰還巻線リードは他と繋がずアンプ内の空き端子に固定するか、付属の絶縁スレーブで先端を絶縁処理した後、巻き取ってRW-40-9.5ケース内に格納します(取扱い説明書参照)。
カソード帰還巻線の使用方法
カソード帰還を用いる場合、1次巻線とカソード帰還巻線の接続は下図の通りです。
必ずP1(橙)を用いる出力管にはK1巻線を用いて、P2(黄色)を用いる出力管にはK2巻線を用いてカソード帰還をかけて下さい。
自己バイアス形式の場合はK1-茶とグランドの間、及びK2+白とグランドの間に自己バイアス抵抗とバイパスコンデンサを設けます。
カソード帰還量の求め方
出力段の1次巻線側利得は信号の半波を上下の出力管が別々に増幅するB級PPで考えると簡単に求まります。(A級、AB級も同じ結果となります。)
まず、カソード帰還接続では出力管に対して1次巻線とカソード帰還巻線の両方が負荷となるため、負荷抵抗が2.38KΩ(9.5KΩの1/4)ではなく
Rl = ( SQRT(2380) + SQRT(16) ) **2 = 2786
SQRTはスクエアルート演算
**2は二乗演算
となります。
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 2786 // Rp )
gmは出力管の相互コンダクタンス
Rpは出力管の内部抵抗
//は並列値演算
で求まります。
カソード帰還後の利得は
帰還率βが負荷Rlとカソード巻線の電圧比(巻線比)となりますので
β = SQRT( 16 / 2786 ) = 0.075
帰還後利得は帰還回路の公式より
Af = A / ( 1 + Aβ)
となります。
帰還量は A / Af
良く使われるdB表現では 帰還量 = 20 * log( A / Af ) dB
となります。
カソード帰還量計算例
大型3極管 211を例にカソード帰還量を求めてみます。
211のgmは3150μS、Rpは3810Ωですので
カソード帰還をかける前の出力段の1次側での利得は
A = gm * ( 2786 // Rp )
= 3150 * 10**-6 ( 2786 // 3810 )
= 3150 * 10**-6 * 1609
= 3.15 * 1.609 = 5.068 倍
帰還後利得は
Af = A / ( 1 + Aβ)
= 5.068 / ( 1 + 5.068 * 0.075 )
= 5.068 / ( 1.38 ) = 3.67 倍
帰還量は 1.38 又は 20 * log( 1.38 ) = 2.8dB
となります。
40Hz〜25KHz −1dbの帯域と暴れのない素直な減衰特性が特徴です。100KHz付近に+-0.5db程度の軽微な乱れが見られますが、それ以外は低域、高域とも理想的な減衰特性をしています。
位相の回転も大変穏やかで安定した負帰還をかける事ができます。低域では1Hzにおいても進みは90度以下です。高域においても140度以上遅れる事はありません。
インピーダンス、インダクタンス特性はシングル接続時と同じです。シングル接続時特性をご参照下さい。