LM1875 反転増幅 DCパワーアンプの製作
詳細設計

2025 (c) S.Yoshimoto

アンプ部回路

下図は本アンプの1チャンネル分の回路図です。

  1. 入力信号はQ101 NX6020デュアルNch/Pch MOSFETの相補式ソースフォロワで増幅されます。
  2. 相補式ソースフォロワの電源はQ102 PHP610030NPKデュアルNch/Pch Trによる±7.6V電源です。
    ±15Vからの雑音を阻止すると共に、MOSFETの損失を低減します。

  3. 相補式ソースフォロワの出力はR100とR109の中点からLM1875の負入力(-IN)に伝わります。
  4. R109と並列なVR101可変抵抗器はLM1875出力端子のオフセット調整用です。
    デュアルNch/Pch MOSFETも特性が揃っているとはいえゲート・ソース電圧特性に差異があります。
    加えて、本アンプは20倍の直流利得があるのでLM1875のオフセットも直流利得分増加します。
    それらにより生じるLM1875出力端子のオフセットをVR101で調整し、LM1875出力端子電位を0Vにします。
  5. LM1875出力端子に繋がる補正CR (R120, C110)は6.8Ωと0.1uFです。
    メーカー推奨の1Ωと0.22uFより大幅に低減されていますが、十分に安定です。
  6. 電源電圧は±15Vです。15W(6Ω負荷時)の出力を得られます。

電源と保護回路

下図は本アンプの電源と保護回路の回路図です。

  1. コネクタ CONN301の±15Vはコーセル製±15V 1.7Aスイッチング電源PBW50F-15から供給されます。
    ダイオードD301,D302は電源への逆加圧を防ぎます。
    インダクタL301,L302は電源からのスイッチングノイズを減衰するフィルタです。
    このフィルタは電源にスイッチング電源を用いる際に必要です。
  2. 保護回路はPICマイコン PIC16F1823とリレーで構成されます。
    PICマイコンのプログラムは以下の場合にリレーでスピーカを切り離します。
    ・電源投入時のノイズ防止、電源投入後5秒間
    ・左右出力に±200mV以上の直流漏れが生ずる。
    ・電源断時のノイズ防止、+15V電源の電圧が20%以上低下する。
    PICマイコンのACコンバータが左右出力と+15V電源を常時監視し保護を実行しています。
    保護動作中は電源LEDが点滅します。

基板上全回路図

LM1875反転増幅DCパワーアンプ基板全回路図(.pdf)

使用素子について

  1. LM1875
    最大20Wの出力が得られるオーディオアンプ用のパワーOPアンプです。
    自作に用いられる事も多く、音質も高評価を得ています。
    5pinのTO220形状をしています。
    LM1875データーシート

  2. NX6020CAKS
    相補式ソースフォロワに用いられるNX6020CAKSは小信号用のデュアルNch/Pch MOSFETです。
    特性の揃った2個の小信号用のNch MOSFETとPch MOSFETが格納されています。
    写真は1円硬貨の上に載ったNX6020CAKSです。非常に小さな形状の表面実装素子です。
    MOSFETは出力段等の電力用途に良く用いられますが初段にも有用です。
    接合型FETに比べ
    の利点があります。
    NX6020CAKデータ―シート

  3. PHP610030NPK
    中型のNch TrとPch Trが格納されたデュアルトランジスタです。
    耐圧100V、最大コレクタ電流3Aと駆動力が高く、hfeは0.1mAから400mAの広範囲で250と高性能です。
    本アンプでは相補式ソースフォロワ用の±7.6V安定化電源にこのデュアルTrを使用しています。
    PHP610030NPKデーターシート


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