相補式増幅回路解説

(c) S.Yoshimoto
2018
2019/02 update

半導体増幅回路

半導体を用いた最も基本的な増幅回路は

です。
MOSFETを用いたソース接地増幅回路を例として解説します。
半導体には相補関係にあるNch素子とPch素子があります。
右図は

です。
どちらも交流入力信号を増幅し位相が反転した交流出力信号を得ます。
NchとPchのMOSFETのGm等諸特性が等しければ同じ出力信号が得られます。

半導体増幅回路の歪

MOSFET素子の入出力の関係は指数関数をしています。
Nch素子とPch素子では互いに電圧・電流の方向が逆向きの指数関数を持ちます。
直線(一次)関数ではない為にNch素子でもPch素子でも出力信号に歪が生じます。

無信号時の動作点を赤球とすると、
+電圧方向の信号が入力されると動作点は赤矢印方向に移動します。
ー電圧方向の信号が入力されると動作点は緑矢印方向に移動します。
同じ入力信号に対してNch素子とPch素子では動作点が逆向きに移動します。

その結果、生じる歪はNch素子とPch素子では逆向きとなります。

相補式増幅回路

上記のNchMOSFETソース接地増幅回路とPchMOSFETソース接地増幅回路の出力を合成すれば、歪は打消し合い低歪率の出力が得られます。
右図が相補式ソース接地増幅回路です。
NchMOSFETとPchMOSFETのドレイン同士は直流電位が異なるので直接は結べません。
それなのでC6 1000uFのコンデンサで結べば交流出力(音声出力)を合成できます。

相補式ソース接地増幅回路では

その結果、低歪率の出力が得られます。

歪打消しの検証

LTspiceを用いて歪が打ち消されるかを検証しました。
下図の

です。

1kHz入力での歪率解析の結果です。


でした。
相補式ソース接地増幅回路の歪率は単一のソース接地増幅回路に比べ約1/20に減少します。

留意点

MOSFET等半導体には小信号用から電力用まで多様な品種があります。
相補式に用いるNch素子とPch素子の選択と使用には下記の点を留意して下さい。


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