この写真は解説の為、蓋を開けています。内部には高電圧が掛かっている部分がありますので絶対に開けないで下さい。
Model8-300Bの解説をおこないます。Model8-205Dは出力管が異なるのみで構成は同じです。
Model8は下記の部分から構成されます。
AC100V電源配線とトランス、入出力端子・スイッチを除く全ての部品は1枚のプリント基板に実装されます。
300Bは音の良い出力管ですが、下記の使いにくさもあります。
これらに対応しModel8では
を実現した3段直結固定バイアス回路を採用いたしました。
300Bを出力段とし、通常の方法で真空管式3段直結アンプを構成すると、図1のように各段のプレート電圧が積み重なり高い電源電圧が必要となります。
図1
また300Bのカソード電圧も高くなり、300Bのカソード抵抗からは大きな発熱が生じます。
Model8では電源電圧の上昇と300Bのカソード抵抗からの発熱を抑える為に、PchのMOSFETとマイナス電源を導入しました。
図2
2段目をPch-MOSFETとします。Pch-MOSFETはマイナス電源で動作する真空管として働きます。
真空管のプレートに相当するドレインがマイナス電源側となり直結しても電源電圧がプラス側に積み上がりません。
さらにドレイン電圧がマイナス側になるので、VRを調整してドレイン電圧を-70V付近に設定すれば、そのまま300Bのグリッドバイアス電圧として利用でき300Bをカソード抵抗の無い固定バイアス動作にできます。
これにより300Bのカソード抵抗を排除でき発熱も無くなります。
残念ながら図2のPch-MOSFETを用いた3段直結回路はそのままでは実用になりません。
理由は初段真空管のプレート電圧変動やプラス電源、マイナス電源の変動により300Bのバイアス電圧が動いてしまうからです。さらに300Bにカソード抵抗が無い為に、少しのバイアス電圧変動で300Bのプレート電流が大きく動いてしまいます。長期間安定動作をさせるには定期的なVRの調整を必要とします。
そこで、図2のVRを人手ではなく、自動的に調整するようにしたのが下図の回路です。
図3
出力トランスの電源側と+330Vの間にある91Ωはプレート電流検出用の抵抗器です。
この回路は、91Ωの両端に生じる電圧と7Vの定電圧ダイオードの両端電圧をPNP
Trで比較し、
91Ωの両端電圧が7Vとなるように自動調整します。
91Ωの両端電圧が7Vの時のプレート電流は7V /91=約75mAです。
PNP Trは
91Ω両端の電圧が7V(プレート電流が75mA)より小さいとONになります。
つまり、図2のVRの値が小さくなったのと同じで、Pch-MOSFETのドレイン電流が増え、
300Bのバイアスは浅くなり、プレート電流が増えます。
逆に91Ω両端の電圧が7V(プレート電流が75mA)より大きいとOFFになります。
図2のVRの値が大きくなったのと同じで、Pch-MOSFETのドレイン電流が減り、
300Bのバイアスは深くなり、プレート電流が減ります。
こうして、真空管や半導体特性の温度変化や消耗、電源電圧の変動が生じても300Bのプレート電流は
75mA一定に保たれます。
さらに、固定バイアス形式であるにも関わらず無調整にて300Bを交換できます。
低雑音を実現する為にフィラメントを直流点火します。
従来は3端子レギュレータ等のアナログ安定化電源が用いられ、安定化電源で大きな発熱が生じていました。
Model8では最新のDC/DCコンバータICを採用し低雑音ながら省スペース、低発熱の点火用電源を実現しました。
DC/DCコンバータはスイッチング動作を用いた電力の変換器です。
Model8で用いたST1S10は900KHzという高周波スイッチング動作により93%の高効率を得ています。
低雑音のDC370V,160mAの高圧電源を作り出す、MOS-FET TK8A60DAによるリップルフィルタを備えます。
出力トランス、電源トランス共に高性能Rコアトランスを用いています。特に出力トランスには弊社市販20W型出力トランスRW-20を採用しました。
出力に対し十分な余裕が高性能と高音質を実現します。
1ch分の増幅部回路図です。
Model8-300Bの全回路図です。
Model8回路図(.emfファイル)
|
10KHz方形波応答
6Ω負荷
6Ωのみ | 6Ω+0.01uF | 6Ω+0.1uF | 6Ω+1uF |
無負荷
無負荷(出力端開放) | 0.01uFのみ | 0.1uFのみ | 1uFのみ |