Model6 USB-DAC & ヘッドフォンアンプ技術解説

Model 6 USB-DAC & ヘッドフォンアンプの技術的な解説を行います。

●Model 6シャーシ内部写真


この写真は解説の為、蓋を開けています。内部には高電圧が掛かっている部分がありますので絶対に開けないで下さい。

1.全体構成

Model6は下記の部分から構成されます。

AC100V電源配線と電源トランスを除く全ての部品は2枚のプリント基板に実装されます。 USB-DAC、真空管式ラインアンプ兼ヘッドフォンアンプ、電源回路が載った主基板と入力セレクトスイッチ、音量調整アッテネータ、ヘッドフォンジャックが載った操作基板です。

2.USB-DAC

DA変換にはTi(旧B.B.)製のUSBインターフェイス内蔵DAC IC PCM2704を用いています。
パソコンからの電源供給に頼らないセルフパワー方式とし、さらにPCM2704に必要なデジタル/クロック・PLL/アナログの3電源を個別の3.3V定電圧電源レギレータから供給しています。

  1. 良質な電源を供給する為、3個の3.3V定電圧レギレータと各電源用OSコンデンサはPCM2704を取り囲むように間近に配置されています。
  2. アナログ出力は音質に優れたカーボンソリッド抵抗と箔巻フィルムコンデンサ、OSコンデンサからなるフィルタを通して、ラインアンプ兼ヘッドフォンアンプ部に送られます。
  3. SPDIFデジタルオーディオ出力はバファとパルストランスを備えた本格的な回路で送り出されます。

3.高精度クロック発振器

PCM2704 USB-DACは12MHzの発振器又は発振子を用います。
写真右が今回用いた米FOX社924B TCXO(温度補償型水晶発振器) 12MHzです。
写真左は従来の普及型水晶発振子です。

豆粒のように小さな発振器ですが、下表のように普及型水晶発振子より20倍も高精度で

FOX 924型TCXO 普及型水晶発振子
周波数確度 +-1.5PPM +-50PPM
全温度範囲安定度 +-2.5PPM 規定なし
全電源電圧範囲安定度 +-0.3PPM 規定なし
経年安定度 +-1.0PPM/年 規定なし

1PPMは百万分の1
詳細は FOX 924Bデータシート を参照下さい。

高精度クロック発振器は2009年6月出荷分から搭載されました。

4.真空管式ラインアンプ兼ヘッドフォンアンプ

0.1W出力のヘッドフォンアンプとしてもラインバッファアンプとしても使えます。
回路構成としてはch当たり6922/6DJ8片ユニットを用いた簡単な無帰還単段アンプです。
単純なアンプですが、0.1Wの出力と十分な帯域・歪み特性を持っています。

入力側から

  1. LineINとUSB-DACの入力選択と100KΩP型抵抗切り替え式ATTによる音量調節
  2. 10KΩと100PFによるローパスフィルタ、USB-DACのポストフィルタ及びLineINからの高周波雑音を除去します。
  3. 6922/6DJ8カソード接地シングル出力段です。
    動作点はIp 11mA, Vp1 100V, Vg -1.65V, Pp 1.1Wです。
  4. 6922/6DJ8のプレート側には2SA1924を用いた定電流回路があります。
    出力トランスが普通のシングル型と異なり、プレート電流を重畳できないタイプなので、出力トランスの代わりに静止時プレート電流を供給します。
    6922が動作して生じる交流出力は出力トランスを通してヘッドフォン等へ送られます。
  5. 2.5KΩ:40Ωの小型出力トランスです。専用に開発しました。
    小型ながら広帯域が得られるようにパーマロイコアを用い、20W型シングルOPT並み約12Hの一次インダクタンスを持っています。
    1次と2次は反転接続で用います。これにより単段増幅でありながら、アンプの入力と出力を同相としています。(反転しません。)
    又、パーマロイコアは小信号時の直線性が良く、抜けが良く、解像度の高い音質を持っています。
  6. ヘッドフォン出力とライン出力は単純に並列出力されています。
    ヘッドフォン出力時は40Ω、ライン出力時はほぼ出力端の1KΩが負荷となります。
    ヘッドフォンとライン出力では負荷に25倍もの開きがありますが、出力トランスを工夫する事により、ほぼ同様の帯域特性に仕上げています。

周波数特性

ヘッドフォン負荷(40Ω)  14Hz〜55KHz(-3dB)
ライン負荷(10KΩ)     17Hz〜33KHz(-3dB)
負荷に大きな開きがあってもほぼ同様な帯域特性を維持します。又、高い負荷抵抗時でも高域が暴れる事もありません。

ヘッドフォン負荷(40Ω)時歪み率特性

最大出力は0.1W(約5%)です。歪み方は緩慢で素直に潰れた波形になっていきます。
1KHzと10KHzは出力に比例して直線的に歪み率が下がる、教科書的理想特性です。
100Hzでは負荷インピーダンスに比してトランスの一次インダクタンスが十分ではなくなるので、歪み率は下げ止まります。それでも0.5%程度までは下がります、無帰還である事を考えれば、100Hzの特性でも十分良好です。

ライン負荷(10KΩ) 時歪み率特性

最大出力4V(約5%)です。1KHzと10KHzの出力1Vでの歪み率は0.1%台で無帰還としては驚異的低さです。100Hzはヘッドフォン負荷(40Ω)時と同じ理由で其処までは下がりませんが十分良い値です。


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